このページでは、3種類の熱の伝わり方(伝導・対流・放射)をわかりやすく図で解説します。

 

 

 

1.熱というのは分子の運動のこと

 

さっそくですが、熱というのは物質を構成している分子の運動のことを言います。

 

あらゆる物質(気体・液体・固体)は分子(または原子)と呼ばれる小さな粒で構成されていて、
物質を構成しているその分子は常に運動(振動)しています。

 

そしてその物質を構成する分子の運動が激しければ熱エネルギーが大きく(温度が高く)、
反対にその物質の分子の運動が穏やかであれば熱エネルギーが小さく(温度が低く)なります。

 

 

上図のように絶対零度というのは物質の分子の運動が完全に止まっている状態のことで、
物質における最低の温度となり、この状態は熱エネルギーが何もないことを意味しています。

 

 

では水(液体)を例にして見てみましょう。

 

水は水分子という小さな粒がたくさん集合しすることで構成されています。

 

 

上図のように水分子の運動が激しければ熱エネルギーが大きく(水の温度が高く)、
水分子の運動が穏やかであれば熱エネルギーが小さく(水の温度が低く)なります。

 

 

このように熱というのはその物質を構成する分子の運動の激しさのことで、
次の章で解説する3種類の熱の伝わり方を理解するときにも必要なためぜひ覚えておきましょう。

 

2.熱には3種類の伝わり方が存在する

熱の伝わり方は全部で3種類存在しますが、それが下記の3種類になります。

  • 伝導(でんどう)
  • 対流(たいりゅう)
  • 放射(ほうしゃ)、輻射(ふくしゃ)

上記の名称の他に熱伝導・熱対流・熱放射(熱輻射)とも呼ばれており、
日常的に起こる熱の伝わり方はすべてこの3種類(伝導・対流・放射)に分けられます。

 

さて3種類の熱の伝わり方(伝導・対流・放射)について、それぞれ詳しく解説していきますね。

 

伝導とは?

伝導(でんどう)とは、物質から他の物質(または同じ物質)へと熱が伝えられる方法で、
これは物質を構成する分子から他の物質(または同じ物質)の分子に運動が伝わることによるものです

 

ここでいう物質とは状態(気体・液体・固体)に関係なく、すべての物質のことを指します。

 

熱の伝わり方で多くの人がイメージするのが、この”伝導”ではないでしょうか。

 

 

例えば金属の棒の端を熱すると、次第にもう片方の端の方まで熱くなっていきますよね。

 

 

上図のように火によって熱せられている金属部分が熱くなっていき、
その部分の熱が少しずつ他の金属部分へと移動して伝わっていきます。

 

 

そして熱というのは、”物質を構成する分子の運動の激しさ”のことです。

 

これを考慮して金属の棒の端を熱した様子を見てみると下のようになります。

 

 

火はガスを構成する分子(ロウソクであればロウ分子)と空気中の酸素分子が反応して、
とても激しく運動しているのでとても熱く(温度が高く)なっています。

 

その火(とても激しく運動している分子)で金属を熱することによって、
火を構成する分子の激しい運動が金属の分子へと伝わっていきます。

 

これにより金属の棒は少しずつ熱せられていきます。

 

 

火から金属へと熱が伝わっていくのも伝導ですし、
金属から金属へと熱が伝わっていくのも伝導です。
(後で解説しますが、火には他にも”放射”という熱の伝え方も存在します)

 

このように物質を構成する分子同士がぶつかることによって、熱が伝えられるのが”伝導”になります。

 

対流とは?

対流(たいりゅう)とは、流体(気体と液体)が移動することで熱が伝わる方法で、
これは流体の密度の変化によって流体が移動して熱が伝わることによるものです

 

対流については伝導とは異なり、物質を構成する分子の運動は特に考える必要はありません。

 

対流で考える必要があるのは、流体(気体と液体)の温度変化による密度の変化についてです。

 

 

「暖かい空気(水)は上に行き、冷たい空気(水)は下に行く」という話はご存知でしょうか。

 

これは本当のことで、流体の温度が上がると重さは変わらずに体積だけが大きく(膨張)なり、
反対に流体の温度が下がると重さは変わらず体積だけが小さく(圧縮)なります。
(気体や液体のような流体だけでなく、固体でも同様の変化は起こります)

 

 

これを密度という言葉で置き換えると、流体の温度が上がるとその流体の密度が小さく(軽く)なり、
反対に流体の温度が下がるとその流体の密度が大きく(重く)なります

 

そして物質の重さはその物質の密度の大きさによって重い・軽いが決まるため、
空気や水のような流体の温度が変化して密度が変われば、その流体の中で移動が起こります。

 

 

上図のように温度が上がって密度が大きく(軽く)なった流体については上へと移動し、
温度が下がって密度が小さく(重く)なった流体については下へと移動します。
(火からの熱の伝わり方については”伝導”です)

 

つまり流体自体が移動することによって、流体と一緒に熱も移動することになるわけです。

 

このように流体の密度が変化して、流体自体が移動することによる熱の伝わり方が”対流”になります。

 

 

また”伝導”と”対流”における決定的な違いは、
熱を伝えるときにその物質が移動するかどうかの違いです。

 

伝導であればその物質の分子がぶつかることで熱が伝わっていくので物質は移動しませんが、
対流は熱を持っている物質(流体)そのものが移動して熱を伝えます。

 

伝導と対流にはこのような違いがあるので、覚えておきましょう。

 

放射(輻射)とは?

放射(ほうしゃ)とは、赤外線などの電磁波によって熱が伝わる方法で、
これは赤外線などの電磁波が物質を構成する分子を振動させる働きによるものです

 

放射は別名として”輻射(ふくしゃ)”とも呼ばれます。

 

 

熱は物質を構成する分子の運動で、その分子の運動をより激しくさせるのが赤外線などの電磁波になります。

 

 

電磁波の中でも赤外線が最も物質を暖める(分子を振動させる)働きがあり、
赤外線を利用している身近な例としてはオーブンやストーブなどの器具がそうです。

 

オーブンは赤外線を放出することで食材の表面を焼いていますし、
ストーブは赤外線を放出して周囲を暖めています。

 

 

そして放射には他の熱の伝え方(伝導・対流)にはない特徴があります。

 

それは周囲が真空状態であっても他の物質に熱を伝えることができるというものです。

 

例えば太陽から太陽光(赤外線などの電磁波)が放出されて地球にまで届いていますが、
地球に届くまでに真空である宇宙を必ず通ってから来ますよね。

 

なので太陽から地球に熱が伝えられるのは、伝導でも対流でもなく”放射”になります。

 

このように赤外線などの電磁波による熱の伝え方は、
熱を伝えるために仲立ちとなる物質(分子)が必要ありません

 

 

また先ほど火による熱の伝え方には、伝導の他に放射もあると言っていたのを覚えているでしょうか。

 

実は温度を持っている物質ならどんな物質からでも赤外線は放出されていて、
放出されている赤外線の強さはその物質の温度によります。

 

 

その物質の温度が高ければ放出される赤外線も強くなり、
反対にその物質の温度が低ければ放出される赤外線は弱くなります

 

ですので火からはその温度に応じた赤外線が放出されてるので、
火の熱の伝え方には伝導以外にも放射が存在するというわけなんですね。

 

以上が「熱の伝わり方の3種類(伝導・対流・放射)を分かりやすく図で解説!」でした。

 

 

2.まとめ

これまで説明したことをまとめますと、

  • 熱というのは、物質を構成している分子の運動のこと。
  • 分子の運動が激しければ温度が高く、分子の運動が穏やかであれば温度が低い。

<3種類の熱の伝え方についてのまとめ>

  • 伝導とは、物質の分子から他の物質(または同じ物質)の分子に運動が伝わること。
  • 対流とは、流体の密度の変化によって流体が移動して熱が伝わること。
  • 放射(輻射)とは、電磁波の働きによって物質の分子の運動が大きくなること。

 

 

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