1.日射病とは何か?

 

結論からいってしまうと日射病とは、”熱射病の一種で、直射日光を浴び続け、体の熱を外へとうまく逃がせなくなって体に熱がたまってしまうことで起こる重度の障害”です。

 

つまり日射病は、”熱射病のうち、太陽光による熱が原因でなったもの”を指します。

 

 

なので熱射病(熱中症のうち、重度の障害のもの)は熱中症の一種で、日射病(熱射病のうち、太陽光による熱が原因でなったもの)は熱射病の一種になります。

 

(日射病は屋外で起こることがほとんどですが、熱中症は屋外だけでなく屋内にいても起こります)

 

 

上図のように熱中症には症状ごとに4つの分類があり、症状が軽度の順に「熱失神(めまい、立ちくらみなど)・熱痙攣(ねつけいれん)(筋肉の痛み、手足のしびれや痙攣、手足がつるなど)・熱疲労(全身のだるさ、頭痛、吐き気など)・熱射病(高熱、脱力、全身の痙攣、意識障害など)」に分類されます。

 

そして熱射病のうち、太陽光による熱が原因でなったものを日射病と言います。

体に熱がたまりすぎる(体温が上がりすぎる)と体の機能を正常に保つことができなくなり、体に様々な症状が発生します

 

 

人間の体温は、体の機能を正常に保つために37℃前後に保たれており、体温が上がりすぎても下がりすぎても体の機能を正常に保つことはできません。

 

(人間は基礎代謝(生命を維持するために必要な最低限のエネルギー)・筋肉の活動・食事(食べ物を消化・吸収・分解するときに熱が発生)によってエネルギーを消費して体に熱を発生させています)

 

 

例えば体温調節のために、暑い(体に熱が多い)ときには汗を出して熱を外へと逃がそうとしたり、寒い(体に熱が少ない)ときには筋肉を震えさせて熱を発生させたりします。

 

また日射病は高温多湿(気温・湿度が高い状態)の環境下でなりやすく、次の章でなぜ高温多湿だと日射病リスクが上がるのかについても触れながら仕組みを解説していきます。

 

 

2.太陽光によって体に熱がたまって日射病になる仕組み

では太陽光によって体に熱がたまって日射病になる仕組みについて、下の順番で詳しく見ていきましょう。

  • 2.1 太陽光(直射日光)を受けることで、体に熱がたまっていき、汗が出る
  • 2.2 湿度が高い(多湿)と汗が出ても蒸発することができなくなる(=気化熱で体温を下げることができない)
  • 2.3 体の熱を外へと逃がしにくくなり、体に熱がたまって熱中症(体に熱がたまりすぎると日射病)になる

 

 

2.1 太陽光(直射日光)を受けることで、体に熱がたまっていき、汗が出る

 

 

まず太陽光(直射日光)を受けることで、体に熱がたまっていき、その熱を体の外へと放出するように脳が体に指令を出すことによって汗が出ます

 

(次で解説しますが、汗が出る=熱が体の外へと逃げる、というわけではないので注意が必要)

 

 

太陽光はそれ自体が熱を持っているわけではなく、太陽光が物質に当たることで、その物質の持っている熱を大きくする(温度を上昇させる)働きがあります

 

(太陽光は、主に赤外線・可視光線・紫外線などの電磁波(エネルギーを伝える波)から構成されています)

 

 

上図のように太陽光が体に当たると、太陽光を皮膚が吸収して、その当たった部位の熱が大きくなります(=太陽光の当たった部位に熱がたまる)

 

そして体温が上昇すると、脳が体に汗を出すように指令を出すことで、汗が出ます。

 

(赤外線(電磁波)によって物質の温度が上昇する原理については、下の記事で詳しく解説しています)

 

 

2.2 湿度が高い(多湿)と汗が出ても蒸発しにくくなる(=気化熱で体温を下げにくくなる)

 

湿度が高いと汗が出ても蒸発しにくくなるので、それにより汗が接している皮膚表面から(汗が)水蒸気に変化するために必要な熱(=気化熱)が奪われにくく(=体の熱を外へと逃がしにくく)なり、体温が下がりにくくなります

 

(湿度が低いほど汗(水)は蒸発しやすくなり、湿度が高いほど汗(水)は蒸発しにくくなります)

 

 

”汗が出ること=体温が下がる”というわけではなく、上図のように皮膚表面に汗が出てきて、その汗(水)が蒸発するときに、蒸発して汗から変化した水蒸気が熱を持ったまま体から離れていく(体から熱が奪われる)ため体温は下がっていきます

湿度が10%下がると体感温度も1℃下がり、反対に湿度が10%上がると体感温度も1℃上がるとされています。

 

 

 

2.3 体の熱を外へと逃がしにくくなり、体に熱がたまって熱中症(体に熱がたまりすぎると日射病)になる

 

汗が蒸発しにくくなると、体の熱を外へと逃がしにくくなるので、体に熱がたまって熱中症(体に熱がたまりすぎると日射病)になります

 

高温多湿の環境下では、気温が高い(太陽光が強い)ことで外から熱を受けやすく、湿度が高いことで汗が蒸発しにくくなって体の熱が逃げにくくなり、体に熱がたまりやすくなってしまいます。

 

 

上図のように湿度が高い環境で強い太陽光を体に受け続けていると、汗が蒸発しにくい(体の外へと熱が逃げにくい=体温が下がりにくい)状況で太陽光による熱が体にたまり続けていきます

 

これにより熱中症(初期段階)になり、そのまましばらく太陽光に当たり続けていると、(さらに体に熱がたまっていくため)重度の障害である日射病になってしまいます。

 

 

ちなみに日本の夏は、太平洋で発生した湿った空気が日本に流れ込んでくるため、非常に湿度が高いです(=日射病リスクが高くなる)。

 

このように特に高温多湿の環境下だと、より日射病リスクが高くなってしまいます。

 

 

3.日射病の対策

では日射病の対策(基本的には熱中症の対策と同じ)について、それぞれ順番に詳しく見ていきましょう。

  • 適度な水分・塩分(塩化ナトリウム)などのミネラル補給をする
  • 直射日光を避ける
  • 風通しの悪い場所を避ける
  • 冷感タオル・ネッククーラーなどを身に着ける

 

 

適度な水分・塩分(塩化ナトリウム)などのミネラル補給をする

 

 

日射病の1つ目の対策として、”適度な水分・塩分(塩化ナトリウム)などのミネラル補給をすること”が挙げられます。

 

 

汗は約99%が水分、それ以外はナトリウム・カリウムなどのミネラル、乳酸、尿素(にょうそ)で構成されています。

 

汗を出すことによって体からは水分だけでなく塩分などのミネラルも失われていくため、水分補給だけでは体に塩分などのミネラルが不足してしまいます。

 

 

高温(太陽光が強い)環境下での作業や運動でたくさん汗が出る場合の水分補給にはスポーツドリンクや経口補水液、普段の生活での水分補給にはミネラルウォーターや麦茶などがお勧めです。

 

カフェイン(コーヒー・緑茶・紅茶など)やアルコールには利尿作用があるため、これらを含む飲料は逆に脱水を促進してしまい水分補給には適さないので注意が必要です。

一気に水分補給しても尿として排出されてしまうので、のどが乾いていなくてもこまめな水分補給(運動をしていない時は30分~1時間ごとに100mlずつ飲むのが目安)が大切です。

 

(のどが乾いたと感じるときには、体はすでに水分不足の状態にあります)

 

 

運動時は、運動強度によっても異なりますが、理想は15分~30分ごとに1回200ml~300mlほど飲むのが推奨されています。

 

例えば、ジョギングなどの軽い運動のときは30分~1時間ごとに合計400ml程度、激しい運動のときは30分~1時間ごとに合計500~1000ml程度飲むのが目安です。

 

 

直射日光を避ける

 

 

日射病の2つ目の対策として、”直射日光を避けること”が挙げられます。

 

直射日光を受けると、その受けた部位に熱がたまってしまうため、できるだけ熱がたまらないように日陰などの涼しい場所に移動することが大切です。

 

 

高温(太陽光が強い)環境下で作業しなければいけない場合はいつもよりも多く休憩(水分補給を含む)をとったり、できるだけ直射日光が皮膚に当たらないように日陰(ひかげ)で作業したり、日傘(ひがさ)や帽子を用いて直射日光を避けるようにしましょう。

 

 

風通しの悪い場所を避ける

 

日射病の3つ目の対策として、”風通しの悪い場所を避けること”が挙げられます。

 

風通しが悪いと、人から発生した汗や熱によって、その場所に湿気や熱気がこもるため、日射病になりやすい環境(高温多湿)になってしまうので、風通しの良い場所に移動しましょう。

 

 

また風(空気の流れ)に当たることで、空気が体の熱を奪ったり、汗が蒸発しやすくなるため体温が下がりやすくなります。

 

(一般的には風速が1[m/s]増えるごとに体感温度は1[℃]下がると言われています)

 

 

上図のように風に当たることで、流れてきた空気に体の熱が奪われるため、体温が下がります

風が強いほど、短い時間に皮膚がより多くの空気に当たることになるので、(風が強い方が)体温が奪われやすくなります。

 

気温が低いほど、空気1つあたりに奪われる皮膚表面の熱が多くなるため、(気温が低い方が)体温が奪われやすくなります。

 

 

熱は温度の高い方から低い方へと移動するため、気温(空気の温度)が体温より低ければ体から熱が奪われ(冷たいと感じる)、逆に気温が体温より高ければ体が空気からの熱を受ける(熱いと感じる)ことになります。

 

 

そして上図のように風が吹くことによって、体の周りの湿度の高い空気(汗が蒸発して湿度が高くなる)を吹き飛ばして湿度の低い空気が送られてくるため、それにより汗が蒸発しやすくなって(気化熱が奪われることで)体温が下がりやすくなります

 

 

冷感タオル・ネッククーラーなどを身に着ける

 


※上はネッククーラーの写真

 

日射病の4つ目の対策として、”冷感タオル・ネッククーラーなどを身に着けること”が挙げられます。

 

日射病は体に熱がたまりすぎると起こるので、冷感タオル・ネッククーラーなどを身に着けて体を冷やして体の外へと熱を逃がすことで、できるだけ体に熱がたまらないようにします。

 

 

また、すでに熱中症の症状があるときは、上図のように応急処置として”首の左右・脇(わき)の下・脚(あし)の付け根の前面”の太い血管が多く集まっている部位に保冷剤・冷えたペットボトル・氷や水を入れた袋などを押し当てるのが効果的です。

 

 

熱中症時に首の左右・脇の下・脚の付け根の前面に冷えているものを押し当てるのは、太い血管が多く集まっている部位は血液が多く流れているため、効率よく体の熱を外(血液⇒皮膚⇒冷えている温度の低いもの)へと逃がすことができるからです(冷えた血液は体の内部へと戻る)。

 

(熱中症の症状があるときにどのような行動をとれば良いのかは、次の章の熱中症時の対応フローチャートを見て判断)

人間は体の熱を外へと逃がすときに汗(気化熱によって逃がす)だけでなく、体の内部の熱を血液にのせて体の外へと熱を逃がそうとするため、それにより皮膚(体の表面)の血流(血管内の血液の流れ)が増えます。

 

(暑いときに顔が赤くなるのは、体の内部の熱を体の外へと逃がそうと血流が増えるからです)

 

4.熱中症時の対応フローチャート


※出典:厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト

 

以上が「日射病とは?仕組み・対策をわかりやすく図で解説!」でした。

 

 

5.まとめ

これまで説明したことをまとめますと、

  • 日射病とは、”熱射病の一種で、直射日光を浴び続け、体の熱を外へとうまく逃がせなくなって体に熱がたまってしまうことで起こる重度の障害”。
  • 熱中症は、その症状によって「熱失神・熱痙攣(ねつけいれん)・熱疲労・熱射病(熱射病のうち、太陽光による熱が原因でなったもの=日射病)」の4種類に分けられる。
  • 湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなることで体の外へと熱を逃がしにくくなり、体に熱がたまりやすくなるため、高温多湿の環境下では日射病リスクが高くなる。
  • 日射病の対策として「適度な水分や塩分補給・直射日光を避ける・風通しの悪い場所を避ける・冷感タオルなどを身に着ける」などが挙げられる。

 

 

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