1.所得控除とは

結論から言ってしまうと所得控除とは、”所得金額から各種条件に当てはまる場合に設定された金額を差し引くことで、納税者の税負担を軽減するための控除の総称”で、所得控除は全部で16種類あります。


(控除とは、”納税者の税負担を軽減するために、課税対象(=税金がかかる対象)となる金額から各種条件に当てはまる場合に設定された金額を差し引くことができる制度や仕組み”)





上図は収入の種類(上は会社員・公務員などの給与収入の場合、中は個人事業主の場合、下は年金受給者の場合)ごとの所得税額を算出する流れになっており、上図のように所得控除は”(課税所得を算出するときに所得から差し引くことができる)16種類の控除の総称”を指す言葉として用いられます。


「所得控除額」というと、”所得控除に属する16種類の控除のうち、条件に当てはまる控除額を合計した金額(例:「所得控除額=基礎控除額+社会保険料控除額+配偶者控除額」や「所得控除額=基礎控除額+社会保険料控除額+ひとり親控除+生命保険料控除」など)のこと”を指します。


所得控除の種類 内容
基礎控除 「年間(1月1日~12月31日)の合計所得金額が2500万円以下の場合」に適用できる控除
扶養控除 「納税者に対象となる扶養(=経済的に支援)している親族(配偶者は対象外)がいる場合」に適用できる控除
配偶者控除 「納税者に対象となる配偶者(=夫・妻)がいる場合」に適用できる控除
配偶者特別控除 「配偶者が一定の所得額を超えて配偶者控除の対象外となる場合」に適用できる控除
特定親族特別控除 「納税者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者は対象外)で、年間(1月1日~12月31日)の合計所得金額が扶養控除の対象外となる58万円超123万円以下の場合」に適用できる控除
障害者控除 「納税者本人または生計を一にする配偶者や親族が障害者の場合」に適用できる控除
寡婦控除 「夫と離婚または死別後に再婚していない女性の場合」に適用できる控除(ひとり親控除との併用はできない)
ひとり親控除 「納税者がひとり親(性別は関係ない)である場合」に適用できる控除(寡夫控除との併用はできない)
勤労学生控除 「働きながら学校に通う学生(年齢は関係ない)の場合」に適用できる控除
生命保険料控除 「納税者が生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払っている場合」に適用できる控除
地震保険料控除 「納税者が地震保険料を支払っている場合」に適用できる控除
寄附金控除 「納税者が特定の団体や自治体に寄附(=寄付)を行った場合」に適用できる控除
医療費控除 「1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合」に適用できる控除
社会保険料控除 「納税者本人や親族が負担すべき社会保険料(健康保険料・年金保険料・雇用保険料・介護保険料など)を支払った場合」に適用できる控除
雑損控除 「納税者が災害・盗難・横領などによって対象となる資産に損害を受けた場合」に適用できる控除
小規模企業共済等掛金控除 「納税者が対象となる制度(小規模企業共済・個人型確定拠出年金(iDeCo)・企業型確定拠出年金(企業型DC)など)に掛金を支払った場合」に適用できる控除


所得控除は、所得税だけでなく住民税を計算するときにも用いられますが、所得控除の種類によっては所得税と住民税で控除額が異なるので注意が必要です。


(上表の16種類の所得控除のうち、下側の4種類(医療費控除・社会保険料控除・雑損控除・小規模企業共済等掛金控除)については、所得税と住民税で控除額は同じ)



2.所得控除の仕組み

では所得控除の仕組みを「会社員・公務員のような給与収入を得ている人で、所得税額(=所得税の納税額)を算出する場合」を例にして、以下の順番で簡単に図を用いて解説していきます。


(★マークのついているところで「所得控除」が用いられます)

  • 2.1 年収から(年収に応じた)給与所得控除額を差し引いて、給与所得額を算出
  • 2.2 ★給与所得額から「所得控除額」を差し引いて、課税所得額(=所得税の税率がかけられる所得額)を算出
  • 2.3 課税所得額に(課税所得額に応じた)所得税の税率をかけ、所得税額(=所得税の納税額)を算出
  • 2.4 (税額控除を適用する場合は)所得税額から税額控除額を差し引いて、税額控除を適用した所得税額を算出



2.1 年収から(年収に応じた)給与所得控除額を差し引いて、給与所得額を算出


会社員で1年間の給与収入(年収)が400万円(副業収入なし)の場合を例にして、まずは年収から(年収に応じた)給与所得控除額を差し引いて、給与所得額を算出していきます。


(「給与所得の源泉徴収票」(年末調整が完了した後の12月末から翌年1月末にかけて渡されることが多い)上の「支払金額」の欄が”1年間の給与収入(年収)”を指す)




※出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」


上図のように1年間の給与収入(年収)が400万円の場合、上の表(給与所得控除の早見表)の通りに計算すると給与所得控除額は「400万円(収入金額)×0.2(20%)+44万円=124万円」となります。


その後、1年間の給与収入から給与所得控除額を差し引けば、給与所得額は「400万円(1年間の給与収入)ー124万円(給与所得控除額)=276万円(給与所得額)」のように算出されます。



2.2 ★給与所得額から「所得控除額」を差し引いて、課税所得額(=所得税の税率がかけられる所得額)を算出


給与所得額から「所得控除額」(養っている親族なし、配偶者なしで、基礎控除と社会保険料控除のみ適用される場合)を差し引いて、課税所得額(=所得税の税率がかけられる所得額)を算出していきます。




※出典:国税庁「No.1199 基礎控除」


先ほど算出したように所得額(給与所得額)は276万円なので、上の表(基礎控除の早見表)を参照すると基礎控除額は88万円(令和9年分からは58万円)になります。


(「令和7年分=2025年1月1日~12月31日分」の所得に対して適用できる基礎控除を指す)



そして、社会保険料控除は”納税者が支払った「社会保険料」の全額に適用できる控除”で、会社員・公務員などの給与収入を得ている人であれば主に「健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・介護保険料(40歳以上65歳未満の人のみ支払う)」が対象となり、ここでは年間の社会保険料が60万円かかっているとします。


これにより「基礎控除額=88万円」、「社会保険料控除=60万円」とすると、「所得控除額=148万円」となるため、課税所得額は「276万円(給与所得額)ー148万円(所得控除額)=128万円(課税所得額)」のように算出することができます。

もし養っている親族がいれば「扶養控除」、配偶者(妻・夫)がいれば「配偶者控除」などの控除を(対象者の年収や所得によって)適用することができます。


これにより所得控除額が増えることで、課税所得額(=所得税の税率がかけられる所得額)が少なくなるため、納める税金(所得税・住民税)を減らすことができます。



2.3 課税所得額に(課税所得額に応じた)所得税の税率をかけ、所得税額(=所得税の納税額)を算出


次に課税所得額に(課税所得額に応じた)所得税の税率をかけ、所得税額(=所得税の納税額)を算出していきます。




※出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」


先ほど算出したように課税所得額(=課税される所得金額)は128万円なので、上の表(所得税の税率の早見表)を参照すると所得税の税率は5%になるため、税額控除の適用がない場合の所得税額は「128万円(課税所得)×0.05(5%)(所得税の税率)ー0円(所得税の控除額)=6万4000円(税額控除の適用がない場合に納める所得税額)」のように算出することができます。


(ちなみに課税所得が300万円の場合、上の表を参照すると「300万円(課税所得)×0.1(10%)(所得税の税率)ー9万7500円(97,500円)(所得税の控除額)=20万2500円(202,500円)(税額控除の適用がない場合に納める所得税額)」となる)

”2013年(平成25年)1月1日~2037年(令和19年)12月31日”の25年間は、すべての所得税の納税者は、所得税の他に「復興特別所得税(2011年3月11日に発生した東日本大震災からの復興財源の確保を目的とした税金)」も納めなければなりません


復興特別所得税の税率は、「復興特別所得税=基準所得税額×2.1%」(1円未満の端数は切り捨て)で、基準所得税額というのは”実際の納税額で、税額控除がある場合は税額控除を適用した後の所得税額”を指します。



先ほどの例で見てみると、所得税額6万4000円(税額控除の適用なし)の場合は「6万4000円(基準所得税額)×0.021(2.1%)=1344円(復興特別所得税)」となるため、納税額としては「所得税6万4000円」と「復興特別所得税1344円」を納めなければならない、ということになります。


(もし税額控除が適用できる場合は、所得税額である6万4000円から税額控除額分が減額されて、その残った金額(これが基準所得税額になる)に0.021(2.1%)が掛けられ、復興特別所得税が算出される)



2.4 (税額控除を適用する場合は)所得税額から税額控除額を差し引いて、税額控除を適用した所得税額を算出


税額控除の適用がある場合は、先ほど算出した所得税額から税額控除額を直接差し引いて、税額控除を適用した所得税額を算出していきます。



例えば、税額控除の一種である「配当控除」を適用でき、配当控除額が5万円の場合、上図のように先ほど算出された所得税額(=6万4000円)から配当控除額である5万円を直接差し引くことができます。


これにより「6万4000円(税額控除を適用前の所得税額)ー5万円(税額控除額)=1万4000円(税額控除を適用後の実際に納める所得税額)」となるため、所得税の納税額を減らすことができます。



以上が「所得控除とは?意味と仕組みをわかりやすく図で解説!」でした。



3.まとめ

これまで説明したことをまとめますと、

  • 所得控除とは、”所得金額から各種条件に当てはまる場合に設定された金額を差し引くことで、納税者の税負担を軽減するための控除の総称”で、全部で16種類存在する。
  • 所得控除額とは、”所得控除に属する16種類の控除のうち、条件に当てはまる控除額を合計した金額(例えば、「所得控除額=基礎控除額+社会保険料控除額+配偶者控除額」)のこと”を指す。
  • 16種類の所得控除のうち、4種類(医療費控除・社会保険料控除・雑損控除・小規模企業共済等掛金控除)については所得税と住民税で控除額は同じ。



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